2011年02月
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神保町からほど近い米沢嘉博記念図書館で、「吾妻ひでおマニアックス」という特別展示が行われています。とういことで、ちょっと前ですけど昼ごはんにパンチマハルに出かけた帰りに寄ってきました。記念図書館の1階奥を使った比較的コンパクトな展示ですが、有名なウロン文学選集の『へろ』や『ふるむまかおめら』、実験的な作品の展示があり見ごたえ十分です。 |
新聞、雑誌、テレビ、ラジオといったマスコミ4媒体といわれてきたメディアが崩壊していく……といった議論がある。人々がふだん暮らしていて、社会や経済が回っていて、国や世界の情勢といったものがあるときに、我々の目耳としてのメディアの役割はとても一言では説明できない。しかし、旧来型のメディアが稼げなくなってきている理由は、単純に「ネットのほうが便利だから」ということに尽きるのではないか?
そのように考えている私からすると、同じように旧来型メディアといえる「書籍」が、書籍の形のまま電子化するというのは、ちょっと頭がこんがらがりそうになるテーマである(電子雑誌もだが)。
1つは、すでにネットがあって、その上で自由に文字も写真も、映像すらやりとりされているところに、「本」というフォーマットを押しつけられている気がするというのがある。しかし、もう1つまったく逆の気持ちとして、出版というのは人の知恵や情報を文字どおり「版」として固定することに意味があるのであって、ネットの時代になっても本は別の価値があるという気もするからだ。
というように、電子書籍ってどうなるのかパズルのようにとらえていたところで、『電子書籍は「楽園」か「荒野」か?』(歌田明弘著)を読んでみた。著者の歌田氏は、『ユリイカ』の元編集長ということなので「紙寄り?」疑惑をもたれそうだが、『週刊アスキー』の連載「仮想報道」を読まれている方はご存じのとおり、冷静かつフラットにその状況を見ている(たぶん数少ない人物の一人である)。『月刊アスキー』でも、まだ「電子書籍」の「電」の字もない頃から、このあたりのテーマでお世話になっていた。
この本自体が、電子書籍として、角川書店の電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」と「VOYAGER STORE」で提供されるのだが(価格は350円)、いまの状況を伝える絶好のドキュメンタリーになっている。というのは、いま日本の電子書籍に直接関わっている“当事者”の12人に取材して、歌田氏が、コメントする構成になっているからだ。登場している方々は、次のとおり(敬称略でよろしいでしょうか)。
・グーグル株式会社 佐藤陽一
・イースト株式会社 下川和男
・株式会社イーブックイニシアティブジャパン 鈴木雄介
・国立国会図書館 長尾真
・総務省情報流通行政局 松田昇剛
・株式会社NTTドコモ 船本道子
・大日本印刷株式会社 岡素裕、川崎誠一
・株式会社電通 照井真一、金澤唯
・株式会社産経デジタル 近藤哲司
・シャープ株式会社 松本融
(※掲載順・敬称略)
歌田氏のあとがき「熾烈な〈電子書籍戦争〉で有利なのは誰か」が、いまの状況をとてもうまく伝えている。
まず、出版社とIT企業の間に深い亀裂が横たわっているとういこと。それは、どちらが既得権益を守るのに必死でどちらが悪者だとかそういう議論ではない。IT企業は「利用者目線」ということをふた言めには口にする。それを、最優先してその反応を見ながら、しばしば利益度外視でやる企業が成功するネット企業の意識が、その亀裂を生んでいる。
次に、日本の出版社とアメリカ企業の溝の深さというものもあるという。契約社会のアメリカと信頼関係の日本の商習慣との間に、これまた意識の差がある。IT企業で、アメリカ企業のアマゾンやアップルは、2つの溝を前にしていることになる。また、「マーケティングに使えるデータを教えてくれない」ということも問題のようだ。より広くとえられば、ルールを一方的に握られているということかもしれない。
この2つを示して、歌田氏は、「このように見てくると、電子書籍について期待している人々は、とりあえず日本の企業の動きに注目したほうがよさそうだ」と書いているのだ。なんと、アマゾンやアップルが、日本でどんどん電子書籍を出すようになる日は、まだ先だと明言しているのである! そして、携帯電話事業者が、電子書籍の世界に入ってきたことで、次のラウンドに入っていおり、彼らが「電子書籍フィーバー」(!)の行方を握っていると締めているのだ。
グーグル、アップル、アマゾン(これは当然だが)、NTTドコモやauなど、なだたるIT企業がいずも「電子書籍」に一生懸命になっているのはなぜか?
彼らは、文字でも絵でも音でも、あらゆる情報をバクバクと食べて大きくなる「情報の怪物」なのである。そろそろ、ウェブ上にある玉石混淆な情報ではなくて、うまい情報にありつきたいと、怪物は申しておるというわけだ。「情報を食べてそれからどうするか」は、歌田氏が利益度外視とか利用者目線と指摘しているとおり、それで世界を変え人々に恩恵をもたらしている。
そうした世界の中で、電子書籍は、最初にふれた「ネットのほうが便利」というのを超えないとけいない。いまでも、誰かが本を書いたり、ブログや論文やニュースを書いて、それがソーシャルメディアで、ざわめきのように議論され、新しい知見や意識が生み出される。そうしたことが波のように繰り返されることが、すなわち創造性なのだ。そのループにうまく入り込んで、ネット時代に「これは有益」とならないといけないと思う。
人々が議論に明け暮れてるあいだに、さっさと台湾や中国で電子出版に取り組んでいるイーブックイニシアティブの鈴木氏や、文字とコンピュータに関して早くから深く関わってきたイーストの下川氏も登場しているのも貴重である。そのあたりも含めて、電子書籍に直接かかわる12人のキーマンの言葉、読んで比べておく価値は十分にある。
p.s.
『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書)という本を書きました。いまの20代を中心に、ネット上の行動やコンテンツの消費、ソーシャルメディアやiPhoneの利用状況から、次の時代の日本人が少し見えるのではないかという本です。
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