« パソコンの歴史が終わる月間? | メイン | iPhone×Androidの図式を作ったのは孫さん? »
私が外で仕事をして会社に戻るときの“ケモノ道”の上に、ヨドバシカメラ西口本店がある。JR新宿駅や、都営新宿線、大江戸線から、新宿西口に点在する住友不動産ビルを巡回するバス乗り場までの途中に、同店はあって、私は本当にその中を斜めっぽく通過する(夏場は空調でクールになりたい気分もあるが)。
そこで、いま俄然目立つのがiPad売り場。オヤジたちが群がっているのだ。来週の『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)では「買うべきか、買わざるべきか」とやるそうだ。ソフトバンクのテレビコマーシャルも「使い方に、正しいも間違っているもない」ときた。この理屈っぽさは、1970年~1980年代にかけて『ポパイ』にはじまるカタログ文化の洗礼を受けた、いま40~50代をターゲットにしているとしか思えない。
※本文と関係ないけど。わずか15グラムのiPadケース「Bubble Wrapper」。紹介ページには私の利用例も掲載されています。
アスキー総研が、iPadの発売直前に行った『iPad購入意向調査』でも、購入意向者のピークは、30代、40代と高かった。『MCS 2010』から求めた「ピュアiPhoneユーザー」(iPhone購入者からMacOS利用者を差し引いた人たち)が20代がピークなのとは対象的だ。ソフトバンクの事前調査でも「買うのは年配」という分析結果が出ていたのだろう。
子供から老人まで使える端末に仕上がっているところが、iPadの素晴らしいところなのだが、けして白モノっぽくならないところがアップル。しかし、このテレビコマーシャルは「さすがソフトバンク」としか言いようがない。
なにしろ、購入前の「利用シーン」についてのアンケート結果は、めちゃくちゃだった。1月のジョブズのプレゼンがそうだったので、ソファの上とか旅行先というのが高いのだが、購入意向者(予約者+購入予定者)では「自宅の机の上」で使うがトップにくる。
なんと、「コンピュータとして使いたい」といっているのだ。
利用目的も「メール」「ウェブ」が、1位、2位とくる。アップルを取り囲んであれやこれやモノが出てくるたびに批評するだけの我々とは違う。これもアップル的には折り込みずみのことなのだろう。事実、ワープロ(Pages)、表計算(Numbers)、プレゼンテーション(Keynote)の「パソコンの三種の神器」もきっちりだしているからだ。
「なぜiPadは、ここまで日本のオヤジたちを引きつけるのか? これでは“オヤジPad”ではないか? その理由を述べよ」という話がある(つまり、私のまわりでその話になりがち)。これは、富士通がTVコマーシャルに高倉健を起用したらショップに「健さんのパソコンをくれ」と言ってやってきたオヤジがいたという時代に匹敵する、当業界にとっての「オヤジの春」だからだ。オヤジはiPadに何を期待しているのか?
1.女性にモテる(見せびらかせる)
※iPhoneのときもその目的で無理して買ってビールを飲むアプリなんかを女性に見せびらかしていた愛すべきオヤジがいたでしょう。
2.iPhoneには出遅れたがiPadでいきなりキャッチアップ
※アスキー総研の調査ではiPad購入意向者に占めるiPhoneユーザーの割合は25%しかいない。iPhoneとiPadは別の層が食いついている。
3.老眼でiPhoneは断念したがこの画面なら……
※これはあまり人のことは言えないのだが実際ラクでオススメだ。
4.ビジネス誌がやりまくるので
※iPad購入意向者は経済紙やビジネス誌、経済紙系サイトの利用者。『週刊ダイヤモンド』や『クーリエジャポン』、WBSの功績も大。
5.なんだかよさそうだ
※iPhoneのこともなんとなくは理解している。簡単そうではないか、みんながいいというしオヤジの心理的な家庭内のテリトリー確保にもなる。
6.電子出版の関係なので
※iPadの売りの一つが電子書籍や電子雑誌が読めること。自分の仕事に関係ありと出版関係者が買った。
iPadの出荷がはじまって、いろいろな使い方が明らかになってきて、実際、Twitterの適切なクライアントが整備されてきたのも最近である(Osfoora HDオススメ)。利用目的もまだ明確でないのに、ポンと買えちゃうのは、ある程度お金に余裕のあるオヤジ層という見方もできるだろう。
1~6と並べたが、6の理由で買う人たちはまともな人たちだ。というよりも、iPadは、電子書籍や電子雑誌だけで使うものではない。むしろ、グーグルTV的な「動画とネット」の共存する世界(テレビ受信はないわけだが)、ソファに座って使う以上「ネット通販」の世界のほうが経済的インパクトが大きいはずなのだ。
さて、ここで言いたいのは5の「なんだかよさそうだ」である。これが、実はとても当たっていると思う。「iPhoneのラクチンさが、iPadのサイズになったときに何ができるのか?」という壮大な実験に、いま我々は付き合わされているのだ。しかし、そこで得られる果実は実に大きい。それは、
「運用」をしなくていい
ということだ。「運用って何のこと?」と言われる人も多いだろう。要するに、コンピュータを使うときに、目的とするアプリケーションやウェブアクセス以外に、自分のパソコンを管理することだ。ファイルを整理したり、なにか周辺機器をつなぐのに設定をしたり。「環境」を整備する。ハウスキーピングというものが、いままでのコンピュータには必要だった。
それが大幅におさえられているのがiPhoneやiPadなのだ(設定が1カ所にまとめられているのもそのためだろう)。そんなスマーフォンみたいな感覚でいける感じになっているのは、クラウド系サービスがふえているという部分もある。とはいっても、MacやWindowsに比べて、いまのところできることも限られるので、過大評価はできないので誤解なきよう。いまのところオヤジのおもちゃに丁度いいなんて悪口も聞こえてきそうだ。
とはいえ、これだけできるならiPadみたいな内容のネットブックやモバイルノートがあったらサイコーという気分になってくる。オヤジたちは、なにしろ「自宅の机の上」でiPadを使いたいと答えているのだ。
※本文話題と関係ないけどiPadに続いて導入したのがVAIO type P。私の場合、仕事の関係で持ち歩きはいまのところコッチになってしまう(電池駆動時間も1.5倍になった)。
おそらく出荷がはじまって、これからiPadの利用層もオヤジ中心という印象からもっと広くなるだろう。いまの若い層はカシコイので使えると分かってからなら手を出すはずである(それでも彼らはiPhoneのほうになるか? iPhone4で、Bluetoothキーボードがつくようになったので、iPhone+キーボード+12インチフレネルレンズなんてユーザーも出てくる可能性もある)。いずれにしろ、iPadで、新しい世界が広がりはじめているのだけは間違いない。
その世界をオヤジがリードしているというのは(理由は邪推できるにしろ)結構な図式ではないか?
p.s.
オヤジといえば、『日本人がコンピュータを作った!』(アスキー新書)を出しました。日本のオヤジたちのパワーの痛快さかげんが読める内容になっているので、オヤジの方はご覧アレ。
『iPad購入意向調査』(http://asciimw.jp/info/release/pdf/20100527.pdf)
『MCS 2010』(http://research.ascii.jp/consumer/contentsconsumer/)
リュウド「Bubble Wrapper」発売元(http://www.reudo.co.jp/bubble_wrapper/index.html)
『日本人がコンピュータを作った!』(http://research.ascii.jp/elem/000/000/047/47697/)
『日本人がコンピュータを作った!』(AMAZON)
遠藤諭 on Twitter(http://twitter.com/hortense667)
東京カレーニュース
個人サイト(http://www.8-p.net)個人Twitter(http://twitter.com