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バズワードとbuzzword、意味が違い過ぎる!

近代プログラマの夕4

Posted at 2007/03/16 03:43:30 by hortense

 よく聞かれるようになった言葉の1つに「バズワード」(buzzword)がある。『リーダーズ英和辞典』(研究社)を引いてみると「-n.《しろうとを感心させるような》専門用語,商売上の[仲間うちの]通用語」などと書いてある。英語の辞書の最高峰『Oxford English Dictionary』(2nd edition)にもあって、「buzzword (orig. and chiefly U.S.), a keyword; a catchword or expression currently fashionable; a term used more to impress than to inform, esp. a technical or jargon term; also buzz-phrase.」とある。要は、雰囲気はあるけれど具体的な情報を伝える言葉ではなくて、専門的な狭い世界で使われる言葉というようなことになる。

 ところが、どうも普段この業界(IT業界)の人たちと話をしていると、バズワードという言葉は、もっとずっと良くないニュアンスで使われている。外資系の会社の広報さんとかは「バズをあげていく」(話題を盛り上げていく)みたいな、むしろ前向きな使い方もするが、「バズ」とか「バズワード」の社会的地位が、不当に下に見られている。私は、言霊(ことだま)を感じやすいタイプで、言葉が、しいたげられていると気になってしまう。わざわざこの言葉が持ち出されるのは、相手が、その話題を続けるのに興味がないときというだけかもしれない。「ウェブ2.0、……バズワードでしょう?」てな具合である。

 こんなときは、Wikipediaが役に立つ。やはり調べて見ると大変に面白いことに気がついた。日本語版のWikipediaの「バズワード」と英語版のWikipediaの「buzzword」の項目とでは、語句の説明は置いておくとして、その例となっている単語に大きな傾向の違いがあるのだ。「バズワード」の例は、以下のとおり(2007年3月15日現在)。

IT、ICT、ITソリューション
LOHAS
NGN
OSS
SOA
Web 2.0
アキバ系
勝ち組、負け組
カリスマ
グローバルスタンダード
クロスメディア
決定力
構造改革
国際競争力
コミュニケーション能力
新生活
自己責任
同人
ニート
引きこもり
フリーター
ブロードバンド
マイナスイオン
マルチメディア
ユビキタス

 それに対して、英語版の「buzzword」の例は以下のとおり。

Breakthrough
Business-Centric
Diversity
Empowerment
Enterprise
Framework
Gravitas
Habits of mind
Holistic
Leverage
Long Tail [1]
Menu engineering
Outfrastructure
Next Generation
Paradigm or paradigm shift
Perspective
Polychronistic time
Proactive
Seamless integration
Solution
Sustainability
Standpoint
Synergy
Tipping Point
Turnkey
Vendor Leverage
Web engineering
Web 2.0

 これを見ていると、日本語の「バズワード」のほうは、結構、ちゃんと具体的な概念や意味を持っている単語が多数含まれている。「NGN」、「SOA」、「アキバ系」、「コミュニケーション能力」など、どれも具体的に説明できる言葉である(その意見にズレはあるにしろ)。それに対して、英語版の「Breakthrough」(ブレークスルー)、「Framework」(フレームワーク)、「Leverage」(レバレッジ)、「Perspective」(パースペクティブ)などは、どれも具体的なモノや概念を説明しているとも言いきれない。この「バズワード」「buzzword」の違いには、ちょっと唖然とさせられてしまう。要するに、「それ、バズワードじゃないですか?」と冷ややかに言った言葉は、それほどbuzzwordでもなかったりするわけである。

 日本語と英語で意味が違っている言葉っていろいろある。ナイーブ(naive)とか、マンション(mansion)とか、業界用語だとモバイル(mobile)という言葉のイメージもかなり違っている。しかし、バズワードとbuzzwordの場合は、かなり極端な例ではないかと思う。ところが、この「バズワード」と「buzzword」の例で、唯一、英語版と日本語版で共通して出てくる言葉があるのだ。それは、「Web 2.0」。日本語の傾向だと、これは入っていてもしかたのないバズワードだとは思うのだが、英語版でも最後の1つとして、見事にbuzzwordとして選定されている。

 さて、バズワードとbuzzwordについて調べてみたのは、アスキー新書で出た『大変化時代のキーワード』(2011年を考える会編=http://shinsho.ascii.co.jp/books/books/detail/978-4-7561-4887-2.shtml)を見ていてのことだ。この本には、私も少し関わっていて、何個かの用語の解説と「はじめに」を書いている。しかし、本が出来上がって来たところで「これってバズワードなのだろうか?」と、ずらりと並んだ用語を見ながら思ったのである。なんだか、バズワードと言われるのがいやだという気がしたのだ。

 もっとも、この本の成り立ちは、とても素朴な発想からはじまっている。たとえば、『ウェブ進化論』『フラット化する世界』という話題の2冊を見ると、XMLやオープンソースやAjaxといったテクニカルタームは共通して出てくるのに、それ以外のキーワードがまるで重ならないのである。同じ背景で起きていることが、それぞれ、ネットの世界と経済の世界では、まるで視点が違っている。

 それで気づいたのは、いま「ウェブ2.0」と言ったときに「なんだか空虚な感じがする」という人がいることだ。私は、いまもなんていい言葉だろうと「ウェブ2.0」と言っているが、「ウェブ2.0と口に出すのが恥ずかしい」という人も私の周りにはいる。それは、この言葉がもう旬ではないという理由ではなくて、「大人の言葉でないから」ではないかという気もする。大人(いまの場合は『フラット化する世界』の著者トーマス・フリードマンなど)は、意地でも「ウェブ2.0」という言葉を使っていないようにさえ見える。

 それじゃ、ネットとビジネスの世界は切っても切れない関係になっているんだから、社会・経済のところまでひっくるめて対比できるような感じで用語集にしたのが、『大変化時代のキーワード』といえる。実際、トーマス・フリードマンの話をチラとでも聞かないで、ティム・オライリーの「ウェブ2.0」の議論だけしているのは、なんだかとても視野が狭いようにも思える。実際、米国は、ウェブ2.0でも、フラット化でも、そういう言葉が作られたとたんにみんながグッとそちらに意識を持っていくところが凄いと思う。それが、米国の経済や社会の原動力になっているとさえ思う。『大変化時代のキーワード』では、たとえば、以下のような言葉が出てくる。

第1部 ウェブが大変化を起こした
Web2.0/ブログ/グーグル/SEO/SEM/アマゾン/アフィリエイト/ロングテール/マジックミドル/オープンソース/Ajax/マッシュアップ/クリエイティブ・コモンズ/ウィキ/SNS/ミクシィ/ソーシャルブックマーク/RSS/ユーチューブ/セカンドライフ/バイラル広告/ライブ戦略

第2部 企業とビジネスに迫る大激震
グローバリゼーション/フラット化/オフショアリング/イノベート・アメリカ/BRICs/n-11/インソーシング/アップローディング/スモールワールド・ネットワーク/ティッピングポイント/ネットの中立性/ただ乗り論/情報大航海プロジェクト/グーグル型雇用/J-SOX法/BI(ビジネスインテリジェンス)/ITガバナンス/著作権延長問題/Zune税/コンピュータ・フォレンジック/アカウントアグリゲーション/ウェブアクセシビリティ/象徴的貧困

第3部 技術がさらなる変化を加速する
IP化/NGN/第四世代携帯電話/無線LAN/WiMAX/P2P/XML/JAVA/ウェブアプリケーション/SaaS/ガジェット/ウィジェット/電子ペーパー/オートID/暗号化技術/セマンティックウェブ/センサーネットワーク/ナノテクノロジー/スピントロニクス/フォトニクス/量子暗号

 これらは、バズワードではなくて、意味のあるbuzzwordである。
 なお、前述『Oxford Endlish Dictionary』によると、「buzzword」(buzz word)は、「Students at the Graduate School of Business Administration at Harvard University use a specialized vocabulary known as 'buzz words' to describe the key to any particular course or situation.」とあり、ハーバード大学の大学院生が使っていた言葉だそうで、1946年が初出となっている。buzzwordは、buzzwordだったのだ。

▼今日、悲しい話を聞いた。不二家とペコちゃんについては、この日記でも触れた(ペコちゃんの真相=http://blogmag.ascii.jp/tokyocurrydiary/2007/02/post_29.html)。銀座の不二家を売却するというのだ。あの平仮名の「み」みたいなマークの看板が出ているから有楽町から銀座に向かう気分が出来上がっていたと思うのに……。

『大変化時代のキーワードなど』アスキーの新書のページ(http://shinsho.ascii.co.jp/)。

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