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「それが、軍事マニアの限界なのだよ」と、つい口走ってしまった。などと書くと日本中に推定数十万人はいる軍事マニアを自認する人たちの集中砲火を浴びかねない(潜在的軍事マニアはゆうに数百万人規模であろう)。なので、十分に注意深く書いておくのがよいかもしれない。
数日前のこと、外堀通りの神楽坂の入り口からちょっと入った「庄や」というお店で、男ばかり6人で飲んでいた。二次会、しかも、夜中の12時を回って男6人で飲む場合に、どんなコミュニケーションになるかはご想像できると思う。向かい合った1対1、残りの4人のうち3人が話で盛り上がっていると、残った1人が魚肉ソーセージっぽいハムカツ(これが案外おいしくて悲しくなるのだが)などムシャムシャ食べていたりする。だいたい10~20分おきくらいに、話題も、喋っている組み合わせも変わる。隣の会話に途中から参加する奴もいるし、店員が注文を取りに来ることもあるし、やおらトイレに立つ奴もいる。かと思うといちばん遠い奴がいきなり立ち上がって、「ソレ、違う!」などと、突然、叫んだりすることもある。
そもそも、6人もいるのだから頭に入ってる話のネタの総量は多い。それに加えて、会話する組み合わせも、2人なら1通りだが、6人だと720通りくらいありそうだ。私のイメージでは、これは庄やの地下のお座敷における、ちょっとした「脳細胞」みたいなものである。たった6個の神経細胞からなる「脳」だが、それでもなかなか活性化している感じである。
<人間の脳の能力は計り知れない>などと言われるが、このお座敷のようすを見れば、
「それ当たり前ですよ。計りしれないです」
と言いたくなる。テンコ盛りで出てくる料理・おつまみ・ご飯モノの数々を見れば、
「脳は、体重の2%の重さしかないのに30%のエネルギーを消費する」
という話も、すぐに了解できるというものだ。
そして、重要なのは、こんな感じの6人以上の会話になってくると、1人や2人、話の流れとは関係なく「自分の好きな話をおっぱじめる」奴がいるということだ。
たぶん、これは『脳を活性化する大人のドリル』で超話題の川島慶太先生も、たぶん気づいていないことじゃないかなぁー。
その日は、広告営業系の30代男性3人と編集系3人という、これまた内容的にも一様ではない組み合わせ。それで、一体、どんな話でどうなったのか、それでも、ほんのちょっとした何かのキッカケがあったのかもしれない。広告営業のYが、なぜか「風船爆弾」の話をはじめたのだ。
「風船爆弾」
第二次世界大戦中、日本軍が米国に向けて飛ばした兵器。丈夫で知られている和紙を使い、コンニャク糊で貼り合わせて作った巨大な風船で、爆薬をぶら下げて太平洋を超えて米国を直接攻撃しようという作戦である。風船爆弾(ふ号)のデテールは、それこそ軍事マニアの方々にお願いしたいところだが、何冊か本も出ているみたい。
知らない人は「えー、そんなのあったのー?」と言う可能性もあるが、ある年齢から上の男の子なら「あったんだよねー、そういうの」と90%くらいはご存じなのではなかろうか? 昭和30~40年代、少年マンガ雑誌には第二次世界大戦の話が毎号のように載っていた時期があるし、軍事モノのプラモデルが人気おもちゃの代表だったからだ。そんな雑誌やオモチャで語られる勇ましい兵器の中で、風船爆弾だけは、なんとも独特のテイストを持って少年たちの心に残っていたはずである。
しかも、たしか1万個以上という凄い数の風船爆弾が作られて、いまはインターネットを結ぶ海底ケーブルが地上にはい上がる千葉などの太平洋岸から米国に向けて飛ばされたのだ。
さて、どういう話をしようとしていたのかというと、その私よりも10歳以上は下のYくんの風船爆弾話が、実に、私の時代に語られていたことから進化していないのに驚いた。そこで、たまたま10年くらい前に読んだ、
<スポーツバルーニングの発祥は、戦後、ある人物が捕獲された風船爆弾で飛んだのが始まり>
ということを何気なく言ったわけだ。そしたら、どうもあまり納得していないようす。でも、ホラ、米国のサイトを探してみるとやっぱりありました。風船爆弾で飛んだ話が載っている
(http://balloonlife.com/publications/balloon_life/9801/9912/freeflight9912.html)。
まあ、私も<知っている・知っていない>で、偉そうな話をするつもりはない。たまたま、神保町の源喜堂で買った洋書をペラペラとやっていたら読んだだけなのだ。「それが、軍事マニアの限界だよ」という発言になったのは、庄やの地下のたった6個の神経細胞の1個が、酒の席で言ってしまったこととはいえ、あまりよろしくなかった(この場を借りてお詫び-->Yくん)。
だけど、私の心の中に<ある心理>が働いていたことに気づいてこの文章を書いている。それは、つまり、風船爆弾ってなかなか凄いものだったんじゃないかという気分である。それ自身も壮大な地球規模のスケールのアプローチだし、戦局挽回のためにアイデアが出されて、そのためにものすごい数の人たちが動員されて、実際にやってのけたのですよね。手をコンニャク糊でベタベタにして……。
それって、いろんな意味で日本のオリジナリティというものを感じるし、いまの日本のテクノロジーの世界にちょっぴり欠けてきた部分のような気もするのだ。「風船爆弾みたいなことをやってても無駄でしょう」と指摘してくる人もいるかもしれないけど、実際に世界に浸透した日本の文化というのは、案外、こういうネバッこくて日本独自のものがあって、営々と取り組まれたものだったんじゃなかとも思うわけです。
※長くなったので「マッカーサー元帥とコンピュータ」の関係については次回。
▼いまいちばん食べているカレーは、水道橋の「海南鶏飯」(http://www.hainanchifan.com/hainanchifan/topics/news.cgi)のカレーチキン(税込み850円)。なにしろ自宅から会社に行く途中にある。鶏のスープで炊かれたご飯が少しパラパラ気味で旨く、それだけでも満足できる。カレーはココナツがたっぷり。昔、大久保にあった新世界の「魚の頭のカレー」を思い出す。
東京カレーニュース
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