コデラノブログ 3

放送 の記事

アキバガード下と東急ハンズの間にある越えられない壁

秋葉原駅高架下にある秋葉原ラジオセンターは、僕が東京に出てきた27年前から今も、同じようなたたずまいで存在している。僕にとってはまさにあそこが秋葉原を体現しているようなもので、よく電機部品や線材、工具などを買いに行ったものである。道具箱に入っている工具のほとんどは、あの界隈で買ったものだ。今でも用がないのに、駅から中央通りに出るときに、あの小さな路地のような界隈を抜けて出ることがある。

変わらないことがいいこと、というのは、我々の勝手な妄想だろう。現状のままでは、あの界隈はあと10年保たないと思う。それは建物の老朽化という意味ではなく、存在意義という意味で、である。

例えば今、小さな電気部品をバラで買う必要のあるような人が、世の中にどれだけいるのか。昔あのような部品屋台が繁盛したのは、電気工作が盛んな時代であったり、ちょっとした機械ならば自分で作ってしまうような器用な人たちが居たからである。それはホビーとしても、仕事としても、日本の電気工業というのは、そういう形だった。

しかし今はどうだろう。ほとんどの測定、設計、シミュレーションはコンピュータ内でやるものである。簡単な機械の試作などは、中国の仕事だ。パーツ買ってきて自分で組んだ方が安い、というのは、電気機械もパソコンも、もはや過去のものである。

では今、あのパーツ街の意義は何かと言えば、すでにメーカーでもとっくに保守部品切れの機材の修理とか、あるいは改造とか、これまでにないものを作ってみるとか、そういう道なき道を歩む人たちのために存在している、というのが真実ではないかと思う。

そのことを、売り手のオジサン、今はもうオジイサンになってしまっているが、その人たちは気づいているのだろうか。いやどうやら、昔ながらの商売のままなのだろうし、だからこそあそこの場所に居続けるのであろう。

先日、カメラの露出計に使えそうな電圧メーターを物色にいったのだが、メーター専門店のオジイサンは、電圧とか仕様とか、そういうものがわからないんじゃ売れないという。こちらとしてはどうせ分解して中身だけ使うので、そこそこ低電圧で振れて、コイル部分の寸法さえ合えばなんだって構わなかったのだが。

メーターとしての外側の寸法はわかるが、その中身に関してはまったく関知していないようだ。つまりきちんと設計され定格が決まっていれば、それに見合う部品を出してくることは出来る、逆に言えば、部品はこんだけしかないんだから、これが合うように組めよ、ということなんである。

が、道なき道を歩む者に対しての知恵というかアドバイスというか、自分の知識を応用して客の問題を解決するというスキルを、彼らは持ち合わせていないのである。

まあそれは、これまでの需要の中ではそれで済んだのだろう。しかし今、そういう需要はないのであり、だからあの界隈は後継者もなくシャッターを下ろし始めるような状況になっているわけである。

無理を承知で僕がパーツ街に求めるのは、電機部品の東急ハンズ化である。ハンズは品揃えがいいというだけで存在しているわけではない。これまでにないようなもの、普通個人ではやらないようなこと、まず市販品では売ってないようなものを自分で作るにはどうしたらいいか、ということに関して、店員が高い専門知識を持ち、何が何でも問題を解決してみせる力量がすごい。実際わけもわからずハンズに行って、解決したことは多い。

商品としてみた場合、決して他店より安いわけではないのだが、困ったときになんとかしてくれる店員のスキルに金を払っているわけである。

秋葉原のオジサン、オジイサン、そして若いニイチャンも、潜在的にはスキルは高いはずだ。ただ、商売のスタンスが顧客ニーズと合致していない点は、否定できないだろう。

そういう客はアキバに来るな、と言われるかもしれないが、僕に言わせれば客に併せて変容するのがアキバのアキバたる所以である。僕はガード下を、このまま化石化したくないのだ。

しかしこんなことを、パーツ屋台のオジイサンに言っても、始まらないのだよなぁ。

B-CASはどうなりたいんだよ問題

ちょっと古い話題だが、丁度渡米していてチェックしていなかったので。

デジコン委員会の51回目で、B-CASに変わる新ライセンス方式が検討されているようである。

この記事を見ていると、議論はそもそも無料放送にスクランブルは要るんでしたっけ? というところがスタート地点だったと思うのだが、どうも雲行きが怪しくなって、要はB-CASじゃなきゃいいんだろ的なところにすり替わってきているようだ。

実際に権利者も、不便になって市場が縮小するぐらいならスクランブルはいらん、単にテレビ番組をネットに上げないということをルール化すればいいんじゃないの? と言っているのだが、もはや技術WGが暴走気味の感じがする。

これ、技術者ならわかると思うのだが、どうもこういう新規格の立ち上げというのは、技術者自身その検討そのものがおもしろくなっちゃって、本来どうなればいいんでしたっけ的なところを置いていきがち、というところをものの見事に体現しちゃってる事象にしか見えない。

さらにはB-CASのミニカードまで策定しちゃって、まだB-CASをやる気なんだろうか。

なんかどんどんむちゃくちゃなことになって行っているように感じるのが、気のせいだったらいいのだけど。

テレビ局のスト

先週の話だが、TBSの労働組合のストで、アナウンサーが出演しないという事態が起こったそうである。

テレビ局のような大きな組織になると、労働組合がしっかりできているので、ストも当然ある。僕もNHK時代に経験があるが、ストになるとその時間に約束のロケとかに現役のカメラマンが行かないので、その代わり放送技術部のデスクなど管理職が代わりにカメラを回してくる。

もちろんその人たちも元々カメラマンだったわけで、素人ではないのだが、年に1回急にカメラを回したって、いい絵が撮れるわけはない。足腰弱ってるから絵がぐらぐらするし、普通そこ足つける(三脚立てる)でしょというブツ撮りも手を抜いて手持ちで撮ってくるから、使える絵がほとんどないという悲惨な素材が翌日編集マンのところに上がってくるわけである。しかも相手はデスクなので、文句も言えない。

件の記事の中で、「かなり昔はありましたが、画面上影響が出るようなことはここのところはないですね」というNHK職員の談話が載っているが、違うよ全然違うよ! それ画面上影響が出ないようにオレたち編集マンが死ぬ思いして繋いだ結果だから!

AX300のHDDを交換

今番組を録画してもっとも柔軟に視聴しようと思ったら、一番便利なのがアナログ放送をパソコンで録画することだという、なーんかデジタル技術の使い方を誤った状況にある。しかしながら、パソコンで録画もあんまり安心できない。なにしろパソコンであるから、単に番組録画だけではなくいろいろできるようにと欲を出せば、スリープからの復帰に失敗したとかで週に1度ぐらいは録画に失敗する。

じゃあその機能だけ外だししたいな、と思ったら、アナログ放送対応のレコーダになるわけだが、録画した物をネットワーク経由でPCに転送できるものとなると、とたんに選択肢がなくなるわけである。だがそんな唯一無比の機能を持つのが、NECのAXシリーズだ。AX300は、比較的短命に終わったシリーズ中の、最上位モデルである。

しかしHDDは生もの、ネットの報告では結構HDDが飛んだという話も出ている。うちのはまだ大丈夫なのだが、300GBのIDEのHDDなんて、そのうちなくなってしまうかもしれない。まああと2年は元気に努めて貰わなければならないので、HDDを交換した。

AX300の中身は組み込み型Linuxなので、同じくLinuxを使って2つのHDDをまるっと複製すればできあがりである。たぶん2年前に作業をやったら全然ダメだったかもしれないが、最近はUbuntuをいじくって多少Linuxのリハビリができていたので、先駆者のサイトを見ながらなんとかなった。

マザーのBIOS設定をキープするためのボタン電池も、2度目の交換である。これほどまでに長い間愛されたレコーダというのも、そうないだろう。この使い勝手があと2年で永久に葬り去られるというのは、返す返すも残念だ。

やがてはこれも逸話として、語るようになるのだろうか。

お金がないと面白い番組が作れないのかに対する答え

こないだのITmeidaのコラムに関して、そう思う人も少なくないようである。

ハードウェアやテクノロジーの進化というのは、定着して一般化すると大幅なコストダウンをもたらす。当然それによって設備投資や人件費の削減などが行なわれてきたのであるが、どうにもならないのが撮影である。

とにかく作り込むものがあったり、人を誘導する必要があるといった大がかりな撮影には、やはりお金と時間がかかる。何もかもをパソコンの合成とCGで作るわけにも行かないのだ。

そもそも本物が撮れないようなもの、未来とか宇宙船とかいったものはCGで作るしかないが、それは視聴者も本物を見たことがないので、どっこいどっこいである。しかし視聴者も本物を知っているものにおいては、やはり本物というかリアルな現物の迫力というのは、代用がきかない。制作費の圧迫は、テクノロジーの進化では削れないお金をも削らざるをえなくしているという現状がある。

映像作品を作ると言うことは、ある意味受け手に魔法をかけることに近い。なぜとかどうやってとかあり得ないとか、そう思って貰えるものを作るというのが、商売なわけである。

その魔法も、さめてしまうような底の浅さがあったら、誰も魔法にかからない。面白い、面白くないは、笑える、笑えないとは違うのである。人を笑わすだけならトークでもできるが、映像の作り手自身に話術があるわけではないから、どうしても自分がカメラの前に立つ以外の手段を使って、人を驚かす必要がある。

その仕掛けを作るのに、どうしてもお金がかかるのだ。それがある意味、テレビ放送に乗る意義というか、境目を形成していたのだろうと思う。

一人でコツコツ作ったモノで面白いものもあることは承知している。だがそれは、見るメディアが違うのだろうと思う。メディアごとにコンテンツは変わるべき、というのは、作り手側の基本的なスタンスだ。

だがこのご時世では、そうも言ってられない。それを別に作る金がないのである。ましてや通信の人達は、ただひたすらテレビコンテンツを格安で自分たちのインフラに載せたがっているだけ、というふうに見て取れる。通信インフラがお金を出してコンテンツを作る、あるいは制作費の一部を最初から負担するという発想はない。

逆に、テレビにネット発のコンテンツが頻繁に載るようになる日も、そう遠くないことだろう。しかしそうなったときに、テレビはもっとつまらなくなるのだと思う。

昨日のSWはもうんごいもん見してもらった

昨日の金曜ロードショー土曜プレミアム、スターウォーズEP3/シスの復讐やってたので、たまたま見てた。SWシリーズは全部一通り見たように思っていたのだが、内容をすっかり忘れてた。

地デジにしてはエンコードも綺麗で、なかなかがんばってたと思うが、最後にすんごいの来た。邦画の宣伝かーと思ってみてたら、なんか左下に小さい枠があってそこになんか映っている。近づいてみると、なんとそれがSWのエンドロールだった。

つうことはあれか? この邦画の宣伝はCM枠じゃなくて、番組枠内でやってるってこと?
えーこれって反則じゃね? だってこれやっちゃえば、放送法で決められたCM比率とか関係なく自社広告打てるってことだよね。前からこんなことやってんの? クライアントがよく納得するなぁってことと同時に、もうなんでもアリだなテレビ局。

俺が居た時代とはもう別のもんになってるわ。

原資を探す旅

昨日はクアルコム社のMediaFLOの勉強会を行なった。放送波を使ったモバイルコンテンツビジネスで、受信機が携帯というものだが、ワンセグと違ってちゃんとビジネスモデルができているところがポイントである。

日本のワンセグはビジネスモデルができてないと言われているが、そもそもそれがそんなに価値があるものとは最初はあんまり考えてなかったし、モバイル放送の意味もスタートした当初とは変わってきてしまっている。

今回勉強会でMediaFLOを取り上げたのは、言うなれば技術者としてのカンにしか過ぎない。利害関係を抜きにして映像技術者の目線で言うと、あんまり細かいところまで聞くまでもなく「筋がいい」というカンが働いた。そういう技術をもっとみんなで研究して、次に繋げたらいいんじゃないか、と考えたわけである。

おかげさまで懇親会までも約20人の参加を賜わり、そのほとんどが終電を逃すという失態を犯すほどに密度の濃い意見交換ができたように思う。

今日Culture Firstの記者会見記事が出ていたが、補償金の是非はともかくそれの原資となるものって、結局ハードウェア対価しかないという現状がある。しかし、メディアを消費する時代はまもなく終わる。

ところがネットでは、コンテンツが限りなくタダになる世界しか見えていないところがネックで、サービスやインフラ代が原資になるビジネスモデルが見せられない。

それは結局、民放が始めた広告収益による無料放送というモデルが、ネットにおいてもベースになっているからである。例えば広告出稿が新聞、テレビから減ってネットに移るということは予想されているが、もしかしたらメディアで広告という宣伝手法そのものが衰退期に入ってきているのではないか、そうなったときのコンテンツの価値は、意味は、といったことまで、今のうちから考えておいた方がいいのかもしれない。

そういうときに、有料放送という、コンテンツ単体の対価商売ではなく広告でもない、インフラそのものに対価を払うという古くさいビジネスモデルをいかに新しそうに見せるか、MediaFLOを研究することは、実はそういうことなんじゃないかと考えるわけである。

広告宣伝による無料放送というモデルは、だいたい50年ぐらい上手く行った。今はそれが行き詰まりつつあるわけだが、また手法を変えてそれが新鮮に映る時もくるだろう。それまでどのモデルで食うのか。

それを考えるときに、いろいろな手段を研究しておいて損はない。

モバイル放送ビジネスモデルの勉強会

CESで米Qualcommの「MediaFLO」の取材をさせていただいた。その結果は記事にしたのだけど、これ、日本で過去報道された記事を読むと、なんだかすごく誤解されたビジネスだと思う。

まあそれはある程度仕方がない面もある。米国でどういうビジネス展開なのかというのは現地に行かなければなかなか現物が見られないわけだから。あともう一つ、日本にはすでにワンセグがあるので、地上波の再送信ビジネスとしてMediaFLOが参入する意味がないので、別の使い方で訴求されていることも、誤解に拍車をかけるのだと思う。

日本での利用、それは、現在地域限定ワンセグなどが行なっている、地域振興策と被る。そんなわけで、日本の放送関連事業者はMediaFLOを敵視する雰囲気もあるのだけど、携帯向けのコンテンツ配信技術として、実際に米国で運営されているものを実際に見てみるというのは、勉強になるはずだ。よく知らないでうだうだ言うのではなく、実際にモノを見て、技術としての筋をちゃんと見極めるべきであろう。

というわけで、MIAUではクアルコム ジャパンの方を招いて、勉強会を企画した。電波利用問題、モバイル向けコンテンツ配信、ケータイサービスを使った地域振興などを考えている方に、ぜひご参加いただければと思う。

* 名称:第3回 MIAU勉強会「モバイル放送の新モデル ~MediaFLO~」
* 講師:小菅 祥之 氏(クアルコム ジャパン ビジネス開発シニアマネージャー)
* 開催日時:2009年2月5日(木)、19:30~21:30 (19:15開場)
* 参加者数:30名程度
* 会場:セシオン杉並 〒166-0011 東京都杉並区梅里1-22-32
https://www.yoyaku.city.suginami.tokyo.jp/HTML/0030.htm
(最寄り駅は丸ノ内線の東高円寺駅になります)
* 参加費:一般2,000円
(MIAU正会員は無料、来場時に正会員登録して頂いた方にも適用)

お申し込み
info @ miau.jp へのメールにて、お名前とご所属(MIAU正会員の方はその旨)をご連絡ください。


記事中ではあまり技術的なことに踏み込まなかったが、ばらばらの電波帯を束ねてまとまったコンテンツ帯域として利用する技術とかも持っていて、結構面白いのだ。技術的に興味があるかたも、ビジネスモデルに興味がある方も、是非ご参加いただければ幸いである。

4月の景気は?

CESで渡米している間に、4月に行なわれるNABのメディアレジストレーションが開始されていた。ややこしくなるので後回しにしていたのだが、今日登録を行なった。

さて、飛行機とホテルの手配だが、今回のCESを見ていると、早めに手配して良いかどうか悩むところである。というのも、ホテルは相当に空きが出た模様で、ギリギリになると一泊100ドルを切る高級ホテルも出る始末だ。

飛行機のほうはツアーチケットなら今でも結構安いが、大抵ユナイテッドなのが悩みどころ。米国の景気の悪さもさることながら、世界的に景気が低迷すればNABに出かける人も少なくなるので、他でも安いチケットも出そうだ。

ただ性格として、割と準備万端じゃないと落ち着かないところがあるので、やっぱり多少高くても先に手配しておくべきか。うーん、もう少し考えさせて。

徹夜がデフォは変えられるか

以前ITmediaのコラムだったと思うが、昔のポストプロダクション時代の話を書いたことがある。そのとき、出勤するたびに徹夜で睡眠は二日に一度だったと書いたら、はてなブックマークで「まあそれは大げさにしても~」と軽くいなされて、驚いたことがある。

今の人は、ちゃんとした会社業務を徹夜で行なうような職種があるということが、信じられないようだ。それはそれで、まあ平和なことである。

モノを作る、特に既製品ではなく、世の中に一つしかないことを求められる超カスタムメイドの「番組」を作るという仕事は、「デフォルトが徹夜」である。アイデアを形にするのに、ものすごく時間がかかるものなのだ。しかし制作に当てられる日数は、限られている。

放送日から逆算すれば、おのずと制作にかけられる日数が割り出される。押せばその後に控えている作業の誰かが死ぬだけで、オンエアー日は変えられない。

今はもの書きの現場に身を置いているが、「締め切り」という感性がテレビ業界とは全然違うことにいつも驚く。文章の場合は、最悪誰かが一定の面積を埋めることができるのかもしれない。しかし放送では、同じ穴を埋めるに足ものを作っておく余裕などない。テレビにおける締め切りとは、文字通りデッドラインなのである。

たぶんこういう仕事だから、テレビの現場仕事は他人からはうらやましいとも思われないし、若い人のなり手もない。多くのポストプロダクションでは、新人は毎年入るが、そのほとんどが1年足らずで辞めて行ってしまうのだという。

僕が新人の頃は、オンラインの編集マンが現役でやれるのは35歳ぐらいまでと言われていた。それ以上年をとると体力的について行けず、課長などになってスケジュール管理などの事務方に回るのが普通であった。

だが、今でも僕と同年の人間が、未だに現場をやっている。昔はディレクターより編集マンの方が若いのが普通であったが、今はそれが逆転している。番組制作を実際に回していくスタッフはいつまでも若い人に変わることができず、業界全体が老朽化している。

放送局の広告収入下落が本格的な問題となっており、すでに現場では制作費一律カットの通達を受けている。そのしわ寄せは、実際に制作を回すスタッフの人件費削減で埋め合わせされる。

歳をとっても給料が上がらないのでは、家族を持つことも、養うことも難しい。現場が好きだから、では続けられなくなっていくというのは、筆者らが若いときに横目で見ていた、かつての映画のスタッフの姿と同じだ。

デジタルコンテンツ流通の政策議論の中で僕に課せられたミッションは、現場をいかに生き返らせるかということになる。これまではそもそも、それらの現場が政治の場に乗ることすらなかった。タレコミで労働監査が入るほど、キツい仕事だったのである。

それを変えるには、破壊的な構造改革が必要になる。それが果たして、できるのだろうか。

NHKオンデマンド開始に思う

NHKのオンデマンドサービスが、12月1日にスタートするそうである。

放送局自身が始めるオンデマンドは、新しいビジネスモデルとして総務省でも検討が進んできた。まず試策としてNHKからある程度強制的にスタートさせることで、民放へのテコ入れを図る。

ただ民放とNHKの両方で仕事してきた立場からすれば、NHKの今回の試みは、民放にはあまり参考にならないだろう。というのもまず、制作に関わる会社の数が全然違うため、権利処理の性質が違う。もう一つは、視聴者層が全然違うので、求められるコンテンツのタイプや質が違う。

ただのテレビ番組だろ、というくくりとして一緒くたにされてしまうのだが、実際には相違点が多すぎるのである。

民放で権利処理が簡単なのは、報道番組ぐらいだ。過去報道番組をネットに載せる取り組みは、結構早い時期から実験されてきたが、収益モデルが作れないで居た。それは、本当に単にストリーミングとして存在するだけだったからだ。

報道番組がネットに出る意味とは、検索で引っかかるかどうかである。したがって詳細なメタデータの埋め込みが必須だ。テキスト検索の中でメタデータをひっかけ、クリックするとそれが映像として出現した時間に直接ジャンプできる。

そこまでの検索性があってこそ、ニュースには意味がある。いち早く伝えるという意味で存在することへのコダワリを辞めることから始まるのだと思う。

B-CASカード、戻る

ソニー全社をあげて(この辺脚色してます)探していただいたB-CASカードが、本日無事返送されて参りましたー。いえー。

で、さっそくテレビに突っ込んでみたところ、問題なく映りましたー。ええー?

個人的には、映らなくなっているというのが本来の意味からすると正解のような気がしていたのだけど、どうもただの紛失の場合は、カードの再発行はされても元カード情報はそのままスルーのようである。

いやしかしこれ、実際にカードを個別にリモートで停止できるシステムになっているのだろうか、という疑問も湧く。もし停止できるとしたら、BSの放送波にカード個別の停止信号を乗せるしかない。ネットを使うという手もないこともないが、中にはモデム接続だったり、あるいはそもそもネットワークに接続していないテレビもあるだろうから、それは無理だろう。

ただの紛失にはいちいち対応しないということは考えられるが、もし盗難など緊急性の高い場合は、果たして対応できるのだろうか。いや仮にできたとしても、そういう個別対応を公共の電波に乗せて日本全国に放送するというというのは、放送倫理的に結構大胆な話だと思うが、どうなんだろうか。

B-CASカード見つかる!

こないだなくした貸出機に突っ込んだままで返却してしまったB-CASカードだが、なんとなーくソニー広報さんに話してみたところ、すばらしい検索能力で「見つかりました!」と連絡があった。

郵送で送り返してくれるそうである。すごいねソニー。ちゃんとした会社は違うね。

ところでそのカード、まだ使えるのか? という素朴な疑問がある。いや、こないだ電話口でB-CASの番号を聞かれたのは、それで個人情報をひも付けしていて、住所などを探すためだったのである。やっぱり番号を聞いたってことは、個別に停止してるのかな。

戻ってきたら使えるかどうか、試してみたい。

小寺信良、B−CASの軍門に下る?

B-CASカードの再発行手続きなるものを、やってみた。

というのも、こないだレビューしたSONY 「BDZ-X100」の貸出機にB-CASカードが入ってなくて、うちのテレビのやつを挿してたんだけど、返却時にうっかり抜くのを忘れてて、そのまま返してしまったのである。

たぶん今頃別のレビュアーのところに回っているだろうから、取り返すのも望み薄である。しかもその間テレビが映らないというのが、大きな問題だ。

しょうがないので、B-CASカードの再発行手続きなるものをやってみた。誰かの参考になるかもしれないので、顛末を書いておく。

まずB-CAS社に電話して、紛失の手続きをする。一応紛失理由なども聞かれるので、正当な理由がないと難しいのかもしれない。勇者の方は、「フリーオに使うのでもう一枚ください」とか言ってみて欲しい。どういう反応になるのか、教えて欲しいな。

僕は正直に、「小寺信良と申します。私はAV機器のレビューなどをしておりまして云々」という事情を説明した。すると「まあそれは紛失ということになりますね」ということであった。

それから再発行には、無くしたカードの固有番号が必要である。それはカードが入っていた紙に書かれているので、無くさないように。それを伝えた後、再発行になる。

料金は2000円ちょうどで、郵便局の代引きで届く。手数料など全部込み込みで、2000円丁度である。2〜3日で届くということだが、それまでに見つかって不要になった場合は、代引きの受け取り拒否をしてくれればいい、ということであった。

日曜日に電話したのだが、なんと今日のお昼に届いた。手際よすぎ。

届いたカードは、紛失した番号とは全然違うものが届いた。再発行とはいえ、同じ番号では再発行しないもののようだ。ということは、僕の前のカードは今もどこかで元気にデコードを続けているのだろう。

カード発送のご案内には、「今後とも弊社をどうぞよろしくお願いします」と書いてあった。何も悪いことした覚えはないのに、「テレビを見せない」という仕打ちをするのが1株式会社であるというところに、釈然としない気持ちを覚えた。

技術は技術によって破られる

昨晩あたりからネットで騒ぎになっているが、あのフリーオがB-CASカードなしでもデジタル放送の視聴が可能になるファームウェアアップデートを行なった。僕はフリーオを購入していないので確かめようがないが、ネット上のニュースによれば、制御方式を「ネットワーク」に変えるだけで、デコードされるようである。

B-CASによるスクランブルの解除は、三重構造になっている。放送波の中には、番組自体の中身であるMPEG-2 TSのほかに、番組の情報(メタデータ)と視聴可否に関する情報(有料コンテンツだからダメとか)といったECM(Entitlement Control Message)情報が含まれる。ECMの中には、本編のスクランブル解除キーとなるスクランブルキー(Ks)が含まれる。これらはすべて暗号化されている。

またB-CASカード内には、加入者ごとに固有のIDと、個人契約情報(有料放送のどれを契約しているかなど)が記録されている。これをEMM(Entitlement Management Message)といい、この中にはECMの暗号化を解くためのワークキー(Kw)が仕込まれている。EMM自身もまた、暗号化されている。

まず暗号化解除は、

ステップ1:B-CASカードが持っている固有のマスターキー(Km)を使って、EMMの暗号化を解く。そしてEMMの中にあったワークキー(Kw)を取り出す。

ステップ2:このワークキー(Kw)を使って、ECMの暗号化を解く。そしてこの中にあったスクランブルキー(Ks)を取り出す。

ステップ3:このスクランブルキー(Ks)を使って、映像本編の暗号化を解く。

こうして初めて映像信号がテレビに映るというわけだ。
今回の技術は、ユーザーが受信した放送のECMをフリーオのサーバに送信、サーバ側でステップ2までを行ない、スクランブルキー(Ks)をユーザーに返してやる、という仕組みのようだ。

しかし、1枚のB-CASカードから、サーバとして耐えうる数の暗号化解除キーが取り出せるとは思えない。ECMをどれぐらいの間隔でチェックさせるか、その時間によると思うが、せいぜい2ストリーム分ぐらいではないか。
サーバ側でいったい何枚のB-CASカードが動いているのかわからないが、それほど膨大な数のカードが入手できるとも思えない。実際にはカードの動作が、ユニークIDを偽装する形でエミュレーションされているのではないかという気がする。

これがどのような法律に抵触するのかは、事態が正確に把握できないこともあってわからない。が、技術が技術によって破られるのは、必然の成り行きである。研究レベルではもっと早く破られていたのかもしれないが、それがサービスという形になったのは初めての事例だろう。

事の是非は置いておくとして、このようなリモート鍵によってスクランブルを解除する技術は、これからのネット映像ビジネスには欠かせないものになるだろう。たとえば家庭内にあるPCで購入したコンテンツをコピーして、外出先の別のデバイスから見たとしても、ケータイ程度のスピードであってもネットに常時接続されていれば認証を得られる仕組みとして、有望と考えられる。

技術に善悪はない。それがどう使われるかという利用方法と利用者の意志に、善悪があるだけである。この技術を単純に悪と決めつけるようなことがあれば、それはP2Pと同じ暗い道をたどるだけだろう。

日本映像ソフト協会が香ばしすぎる

社団法人日本映像ソフト協会(JVA)が、デジコン委員会に意見書を提出デジコン委員会に意見書を提出したそうである。で、このニュースリリースに記されている意見書のリンクがものの見事にリンク切れになっていて、そのあたりがいかにもJVAらしい香ばしさを醸し出している。

ご記憶かもしれないが、過去JVAは、たとえタイムシフトだろうが、放送からの私的録画によって直接的な売り上げ減の有無にかかわらず、補償金が必要というリリースを出して、世の中を(゚Д゚)ハァ? のどん底にたたき込んだ。

で、テレビを録画しても直接的な売り上げ減がないという事実は、自分とこの調査で出ている。「DVDユーザー調査 2007」のP.6には、新品DVDソフト購入数減少理由というグラフがあるが、ポイントが2カ所ある。1つ目は 「TVでの放映やそれを一時的に録画して見る機会が増えた」の部分、2つめは「TVでの放映を保存用に録画することが増えた」の部分である。この2つを合わせても、トップの理由である「自分の欲しいものがない」には届かない。

日本映像ソフト協会というのは、基本的にDVD発売元が集まったところである。つまり自分たちの努力が足りないからDVDが売れないという結果が出ているわけだが、そこはスルーしてお金くれるんならちょうだい、というのは、いくらなんでもムシが良すぎる話ではないだろうか。

さて話を戻して、今回の意見書である。元ソースが見られないわけだが、AV Watchに概要が出ている。元ソースが公開されればまたそれを元にして書き直すことにして、記事によれば、「コピーワンス緩和がダビング10としてすでに実現されながら、2008年の第5次答申においても、対価の還元の具体案が示されていないことを不服」とある。

しかしこれは時系列で考えればもうむちゃくちゃな話で、ダビング10は本来6月2日に始まるはずだったが、補償の問題が決着せず延期されていた。開始の芽が見えてきたのは、ブルーレイを補償金の対象にすることで文科省と経産省が合意した6月17日である。

こうしてダビング10がようやくスタートしたのが7月4日。第5次中間答申が出されたのは、6月27日である。ブルーレイの合意から答申発表まで10日しかない。まだ始まっていない、いつやるかも怪しいものに対する補償が、答申に入っていないのはおかしいというのは、もうこっちが日本語として何を書いているのかわからなくなるほどおかしな話である。

さらに記事によれば、「具体策の検討にあたり、HDDの大容量化やホームサーバー化、アナログ出力からの複製に関する著作権保護技術」にも触れられている。これは大変なことで、HDDに補償金は当たり前、そうなれば「NASに映像を入れてるよね、はい補償金」の世界が実現する。つまり録画機能を備えている、いないに関わらず、HDD製品に課金するという話で、これは05年頃に起こった「iPodからも金を取れ」時代までもう一回議論を戻せ、と言っていることになる。

またアナログ出力の制限にも触れている。これは、現在のダビング10ルールでは、アナログ出力にはコピー制御しなくてもいい、というルールに反対するものだろう。現状ハイビジョン解像度のアナログ出力をキャプチャできるボードや製品はそれほど多くない。いくらコピーフリーになるからといっても、アナログで録るというのは時代に合わないことは、誰でもわかっていることだ。

しかも、そうまでしてアナログ経由でBlu-rayなどを焼いても、レコーダ自身はネバーコピーフラグで録るはずである。すまん、それはやったことないので当時の資料をひっくり返して読んだだけだが、たぶんそうなるはずだ。そうまでして執拗に制限をかけたって、技術的コストがかさむだけで、全然複製の制御にはならない。

最後に、「バグを放置した機器の販売を禁止するなど、著作権保護技術の実効性を確保する制度的エンフォースメントを強く要望する」としているが、これはエスケイネットの「MonsterTV HDUS」を指すものだろう。

MonsterTV HDUSはすでに自主的に出荷停止としているが、流通在庫が大量にあったため、解除テク発覚後1週間ぐらいは販売が続けられた。制度的エンフォースメントの意味するところは、これを法規制で流通も止められるようにしろ、ということである。CATVの違法受信チューナーみたいな取り締まりができるようにする、と言えばわかりやすいかもしれない。

しかしデジコン委員会の議論では、制度的エンフォースメントへの移行は、技術的エンフォースメント、つまりB-CASと引き替えということで進んでいる。

B-CASの幕引きとして、制度的エンフォースメントにあとを譲るという形で自主的に退場するか、それともMonsterTV HDUSを市場から排除した実行力があったとして独禁法で違法とされるかは、大きな違いだ。

日本映像ソフト協会のこの意見書は、制度的エンフォースメントの必然性をMonsterTV HDUSに関係があると臭わせたことで、B-CASの独禁法違反議論をデジコン委員会にまで持ち込むことになる。本人たちが予想しなかったレベルで実はもんのすごい爆弾を投げたに等しいと思う。これはやっちまっただろう、どう考えても。

5000円チューナーについて補足

昨日のITmediaのコラムで5000円チューナーのキットのアイデアを披露したのだけど、ごく一部の人には意義がわからなかったようので補足したい。

キット化すればアセンブルするコストが不要になるので、低価格化には貢献できるだろうということが一つ。そしてもう一つ重要なのは、ボランタリーな活動の場が広がるだろうということである。

キットの実費は使用者に負担して貰うとしても、組み立ては腕に自信のある人が集まって、地域貢献ができるというのは、良いことだろう。また中学、高校の技術の時間などに実習として組み立てて貰い、それを施設に寄付するなどの動きもできる。弱者のために社会が貢献できる余地を与えるエンジンとして、キットが使えないかというアイデアだ。

はてなブックマークに「老人や障害者にキットを組み立てさせるのか」という意見があって、衝撃を受けた。そんなことを考えて、書くはずがないではないか。それを知っていて小寺信良をいじめてやろうと思ったのなら、おめでとう、それは成功した。僕はそう書かれたこと以前に、それを書いた人の心の暗さに、ちょっと心が折れた。

モバHO! ついに撤退

東芝主導の衛星放送モバHO!が、ついに来年3月で撤退するそうである。

モバHO!に関しては、以前レビューしたことがある。そのときの感想を言わせて貰えば、コンテンツはみな借り物、有料放送なのにCMD有り、しかも料金も端末も安くない。米国の衛星モバイル放送事業と比較したら、これで普及するわけがないと感じていた。

当時の記事によれば、「パック料金は、プレミアムチャンネルを除く全放送が視聴できるコースが月額2,080円、映像チャンネルのみが1,380円、音声チャンネルのみが1,380円、データ放送のみが300円。そのほかに基本料が月に400円かかるほか、初回時には加入料として2,500円が必要となる。」とある。

撤退の記事では、料金が月額980円となっており、ずいぶん値下げしたようだが、それでも追いつかなかったようだ。

先ほどもちょっと述べたが、モバHO!のモデルは、米国の衛星ラジオ放送である。元々車用のサテライト放送がメインなので、映像の配信などは余計だったのだ。昔の有線のように、音楽専門+音声情報に徹底的に特化すべきであった。

衛星事業は、失敗するとツケが大きい。昔は有力な映像制作会社が、「ニューメディア」のかけ声に乗せられて衛星事業で失敗し、倒産するなどの事件もあった。まあ東芝が今日明日倒産することはないだろうが、HD DVDの撤退の影響もあるのか、不採算部門の整理が必要になったということかもしれない。

MIAUアンケートとフィンランド事情

昨日のICPFシンポジウムでのできごとを池田先生がブログに書かれていて、案の定ホットエントリー入りしている。僕の発言も引用されているが、もう少し詳しく情報を書いてみる。

一つ誤解があるのだが、"「2011年にアナログ放送が止まったらどうするか」という質問に対して、ほとんどの人が「テレビは捨てる」と答えたという"という部分は、MIAUのアンケートからの結果ではない。これは、MIAUでアンケートしたら、ダビング10に関して意味まで含めて理解している人が7割近くも出ているが、一般市民レベルまで落としたらダビング10の言葉の意味すら知らない人も相当あるだろう、という話をまずした。
その後で、アンケートとは別にネット一般の意見として、アナログが停波したらテレビを見なくなるという意見も多いという話をした。
その流れで、実際にアナログが停波したフィンランドでは、まずチューナーが別になったことで不便になったため、テレビを見なくなった老人層、そしてゲームやDVDが見られればいいという若者層が、国営放送の受信契約を解約したため、経営状態が悪化したという話をした。

この3つの話を1回の発言機会に全部喋ったので、混乱があったのだと思う。これは僕の話し方が悪かった。いやもう少し話が細切れでディスカッションするのかと思っていたら、一人一人がかなり長く喋るような進行だったので、どうしてもいろんな話を一度にしなければならなくなってしまったのである。

フィンランドでは、アナログ停波のときに、生活保護世帯には無償でチューナーを配るべきという国会答弁はあったようだが、ネットではそんなの貰ってないという話もあり、実際には配布はされなかったのではないか、ということであった。

一方米国では、生活保護に限らず全世帯に対して40ドルのディスカウントクーポンを配布した。金持ちも貧乏人にも等しく配るあたりが、アメリカ的である。

日本でも、生活保護世帯に無償で配るべきという意見は出ているが、このシンポジウムで僕が問題提起したのは、受信に関わるインフラコストである。

以前自前で地デジアンテナを立てた話をここでも書いたと思うが、UHFアンテナの設置にはだいたい3万5千円から4万円かかる。しかも1回立てたら終わりというわけではない。2012年には新東京タワーから電波発信が始まるので、今度はそっちに向けてアンテナを向け直さなければならない。普通の人はアンテナのRFを測定しながら角度設定するなどということはできないから、また業者を頼むことになる。人一人屋根に上げると、やっぱりそこでも2万円前後の費用がかかるだろう。

では別の方法はどうか。例えばケーブルテレビは現在アナログ放送は無料で再送信しているところが多いが、デジタル放送をそのまま伝送してくれるようになるだろうか。これをビジネスチャンスと見て、使用料がかかるようならば、月額2000円から4000円の費用が発生する。

ではフレッツ光はどうか。これもマンションタイプで2500円、一戸建てでは5000円の使用料がかかる。

確かにテレビやチューナーが安ければ、多少は負担は軽くなるが、逆に5000円チューナーしか買えない、あるいは買わない層が、これだけのコストを負担してまで放送を見るのはキツいのではないか。もちろんそれ以外にもNHKの受信料はかかるわけである。

5000円チューナーの実現性とともに、この受信コストの問題も議論に加えていただきたいというのが、昨日の発言の意図であった。

ホワイトスペースという考え方

今日のICPFのシンポジウムでは、元FCCのKevin Werbach氏の基調講演で初めて知った概念があった。それは「ホワイトスペース」という考え方である。これは電波の割り当てを、おおざっぱにここからここまでは放送ね、こっからここまでは通信ね、2.4Ghz付近はみんな使えばいいじゃん、という考え方ではなく、さらに効率的な電波利用を促進しようとするものである。

たとえばある地域の放送では、1、3、5チャンネルを使っている。なぜこんなに間を開けるかというと、隣接した地域が2、4、6チャンネルを使うという具合に、櫛形にかみ合うような格好で利用することで、干渉や混信を防ぐためである。

しかし、隣接電波の干渉を受けないような、放送拠点に近い位置では、このように飛び飛びでチャンネルを使ったその間は、なんにもない空白である。この空きスペースを「ホワイトスペース」と呼ぶのだそうである。

さらに近年の無線機器は、GPSを使って電波塔の位置を把握したり、ビーコン波を受信したりすることで、どの周波数帯が使われ、どの周波数帯が空いているかを把握できる能力がある。ホワイトスペースは、十分ワイヤレスデバイスで利用することが可能であるという。

考えてみれば確かにそこの隙間は、高出力で利用すると困るかもしれないが、限られた地域だけの低出力であれば、隣接地域と干渉することなく、利用可能なように思える。

たとえばスターバックスでは、店内でかかっている音楽のダウンロード配信などを始めているが、このようなごく限られた規模の高速ネットワーク利用は、ますます盛んになることだろう。またこれも昨今広がりつつある無線型監視カメラも、ほかに使える周波数帯がないので、11bと同じ2.4GHz帯をものすごい勢いで消費しつつある。もはや2.4GHzだけでは、十分なワイヤレス通信が立ちゆかなくなってくるのは、もう目に見えている。

そういうところにこのホワイトスペースを利用できたら、ずいぶんと電波利用効率が良くなる。この帯域を通信系サービス事業者に貸し出せば、これは放送局にとって新しいビジネスになるはずだ。しかも放送波に使っている周波数帯域は、低出力でも足が長い、いわゆる電波の中のオイシイ部分であるので、利用価値が高い。

だが肝心の放送局側には、そういうことがわからない。この電波はオレのものだから、誰にも使わせないといった態度でこのプランに臨んでいる。

だがホワイトスペースを放送局が自分で利用しようとしたって、どうせろくでもないアイデアしか出てこないだろう。なにせかつてライブドアが無線LANや電話回線網と放送を結ぶプランをぶち上げたときに、「記者がケータイで原稿を送れるから便利」とか発言するぐらい、通信に対してズレまくってる業界である。もう帯域を死蔵することが決まったようなものだ。ここをなんとかこじ開けなければならないだろう。

しかし米国の電波利用の話を聞くと、もうテレビの話ではなくて無線通信トータルでこれからどうしようか、というフェーズになっていてうらやましい。日本も早くそんな夢のある話をしたいのだが、それまでに片付けなければならない宿題が多すぎてうんざりする。

2011年 地上デジタル移行は完了するのか

釣りっぽいタイトルはオレのせいじゃない。今度の金曜日に開かれるICPF-情報通信政策フォーラムのタイトルなのである。そこのパネルディスカッションに参加することになっている。

普段コラムでは、アナログ停波反対だったりと、デジタル放送への全面移行へ疑問を呈しているわけだが、実際どういう問題があるの、ということを識者と共に検討するということである。元々筆者がアナログ停波反対なのは、別にアナログ電波が好きなわけではなく、アナログでできていたことができないデジタル放送に問題があると考えているからである。

国全体が動き、全国民になんらかの負担を強いるわけだから、メリットは多い方がいい。単に電波利権だけではない、有意義な議論にしたいと思っている。

ピカチュリン

産経ニュースによれば、目で受けた光の刺激を、電気信号で脳に伝える際に重要な働きをするタンパク質を「ピカチュリン」と命名したそうである。

本文では「電気を操るネズミに似た人気アニメキャラクターにちなみ」と書いてあるだけで、これではなんのことかわからない。これは97年に起こった「ポケモン事件」にちなんでいると考えるべきだろう。

ポケモン事件とは赤と青の激しい点滅のシーンを見て多くの子供たちが病院に担ぎ込まれた事件だ。当時社会問題ともなったので、覚えている人も多いだろう。しかし放送業界では、一般社会以上に大問題になった。

とにかく激しい点滅がダメということで、多くの番組オープニングやCMが作り直しになった。当時筆者はフリーでCMの合成を行なう仕事をしていたが、筆者が少し関わって記憶しているのは、SONYの企業ロゴである。様々な色と図形が激しくフラッシュしながらSONYロゴを形作るというCM用ロゴだったが、これはマズいと言うことで残像処理やコマ抜きを行なって作り直しとなった。

激しい光の点滅を行なう映像は、それ以降規制されて放送できなくなった。これを俗に「ポケモンチェック」と呼んでいる。またそれ以降アニメの序盤に「部屋を明くるして離れて見ましょう」という趣旨のテロップを入れることが義務化された。原因はわからないが、暗い場所で近距離で光の点滅を見ると、脳に影響を与えるという臨床結果だけがわかったからである。

約10年かかって、ようやく原因らしいものが突き止められるのかもしれない。もちろんタンパク質がわかったというだけでは、解決にはならないのかもしれないが。

地デジの真実

ちょっと前のニュースで恐縮だが、民放連が調査した地デジ世帯普及状況調査は、総務省の調査とは違って、妙にリアリティのある数字が出てきている。

今回の調査では、年収別での普及率が出ているのもユニークだ。確かに収入と大型テレビ普及率はリンクして当然であり、それが地デジの世帯普及ともまたリンクしている状況が確認できた。

また持ち家、分譲マンションなど、家屋が自分の所有であるか、賃貸であるかの比率も、年収の格差とともに、借家だから設備が自分で更新できないというジレンマも浮き彫りにしている。

とくにアンテナの問題を改めて指摘したのは重要だ。筆者宅も戸建ての借家であるが、昨年末に入居したときには、アナログの倒れかかったアンテナは役に立っておらず、アナログのCATV回線が入っているのみであった。

大家さんに交渉して、自費で地デジとBSアンテナを設置したが、両方合わせて設置工事費も含め、7万円ほどかかっている。この経験は誰かの役に立つかもしれないので、少し詳しく書いておく。

まずBSアンテナというのは、電気店で買うことができ、設置も自分でやろうと思えばできる。しかし地デジのUHFアンテナというのは、店頭で買うことができなかった。工事とセットでしか売ってない、というのである。店によって違いはあるのかもしれないが、近くのヤマダ電機はそうであった。

見積もりも貰ったが、結局「アンテナ工事一式6万円+消費税」みたいなおおざっぱなものが来るだけで、アンテナが実際にいくらでそのうち工事費がいくら、という明細は出てこなかった。量販店はアンテナ+工事一式というセットで値段を決めているだけで、その内訳は工事下請けの裁量次第という、実に旧体制な商売らしい。

うちの場合はBSアンテナも一緒に付けて貰ったので、BSアンテナ代と合わせて7万円ぐらいになったわけだが、UHFアンテナだけとしても、まるまる半額にはなるまい。おそらく4〜5万円程度になるのではないだろうか。

しかも自前のアンテナは、ブースターを使わなければちゃんと映らないほど出力が低い。特に周波数が一番端っこのフジテレビはそれでも時々ノイズが入り、ギリギリ映ってるという程度である。これだったらケーブルテレビでしっかり送ってもらった方が、よほどいい。

以前マンション住まいのころは、「ケーブルネット埼玉」のパススルーで見ていたわけだが、工事人がちゃんと各部屋で減衰率を測定しながら分配から室内配線までしてくれて、低い場合はブースターも無償で入れてくれた。このケアに比べれば、いくら買い切りとは言っても自力でアンテナを建てるメリットがどれだけあるのか、疑問である。

今都市近郊では、昔のように見通しが良いわけではない。特に駅前付近でどんどんビルやマンションが建つようなベッドタウンでは、潜在的難受信地域が日に日に増えているはずだ。

「電波で一斉送信」というテクノロジーが、都市近郊では事実上役立たずになってきているのだ。それを無視して電波電波言ってても、しょうがないだろうと思う。

いや、そういう見方じゃないな

さっきのエントリなんだけど。

元々JEITAはレコーダ類に対して、「新たに補償金の対象に追加する機器は、権利者の経済的損失を直接生じせしめるものではない、タイムシフト・プレイスシフトを目的とするもの。補償金制度の趣旨に照らし合理性はなく、受け入れられない」としてきたはず。

だがBDレコーダというのは、まさにその「タイムシフト・プレイスシフトを目的とするもの」に相当する。前々からの調査でも、DVDレコーダで本気でDVDを焼くのは少数派だということがわかっている。これらに課金を容認するということは、単純な時間稼ぎだったということである。「経産省が勝手に。我々は省庁の決定に従うのみ」というストーリーで逃げ切るつもりなのだろうか。

JEITAの弁明に注目せよ。

よろしい、ならば戦争だ?

JEITAが取ったアンケートによれば、「地デジ放送に補償金は不要」が78.4%だったそうで。

しかしこのアンケート、実施しているというのは全然知らなかった。報道によれば、4月18日から21日に実施、サンプル数は500人だそうである。ネット上で実施ということだけで、どういうサンプリングなのかよくわからない。

500人という数字はこの手のアンケートにしては少なすぎると思うし、しかも1ヶ月以上前の結果を今頃だしてくるあたり、記事内にもあるように批判をかわす目的はあるだろう。というかこういう結果を突っ返してきた以上、もう単純にタイミング見計らって「やっぱ補償金払いますからダビング10やりましょう」って話には収まらないだろうと思う。あきらかに双方とも感情的になってきている感じがする。

ちなみにMIAUでもこの問題に関するアンケートを実施していて、これは締め切りが5月30日、すなわち今週金曜日までである。今からでももの申すという人は、参加していただきたい。

ちなみに中間報告も受け取っているが、まあ案の定ものすごい結果が出ており、まさに我々がどういう層に支持されているかがよくわかるちゃーよくわかる結果となっている。集計結果のほうもお楽しみに。
ちなみに男女比率もものすごいことになっているので、なるべく女性の方にお答えをお願いしたい。マジで。ホントお願い。

しかしここにきて、想像以上にガチな勝負になってきているなぁ。

今日はダビング10関連が盛りだくさんだ

スタート時期に関しては補償金のなりゆき次第ということになっていたダビング10だが、補償金委員会も決着が着きそうにないということで、次回の委員会が延期になったそうである。

そもそもダビング10というか、現状のコピーワンス緩和方針は、最初から消費者の利便性が置いてけぼりだったわけだが、さらに消費者から懸念の声が上がってきた補償金でまた揉めるってところが、もうどうしようもない。

個人的な持論は、音楽に関しては補償金アリならDRMなしというのが妥当で、放送に関してはそもそも無料放送にDRMかけること自体に根拠が希薄じゃないの? というところなので、今の状況はもう明後日の議論のように思える。

しかも権利者側は、この件でメーカー非難の記者会見をするようだ。こうなるともう喧嘩は目に見えているので、まあダビング10は実現しないまま終わるんじゃないかなぁという感じがしている。

そうこうしているうちに、著作権にフェアユースが導入されれば、そもそもDRMが無駄、補償もいらないでしょ、という方向になるかもしれない。どちらかといえばそっちを支持した方が、幸せになれそうだ。ただ抵抗は多いとは思うが。

ワンセグに釘を刺しておくか

総務省による、地上デジタルテレビ放送に関する浸透度調査結果が発表された。以前から総務省は、地デジへの移行がなかなか進まないのは、認知度が足りないせいであるとして、アピール策を強化した。草なぎ剛がしつこいぐらいにあっちこっち地デジと言って回っているのは、そのためである。

しかし今回の結果、認知度は93%にも登るのに、地デジを視聴していない理由のトップが、「居住地域で地デジ放送が開始されていない」である。受信機の普及が進まないのは、放送されてないからだ。放送開始と対応機器購入は、卵が先か鶏が先かの話ではない。放送が見られなければ、買わないのは当たり前である。

将来のこの手の調査で、ワンセグが入り始めたときは要注意である。というのも、ワンセグは12セグに比べて受信しやすいため、12セグが映らない地域でも映る。電波到達地域は公開されたデータがないようだが、エリアが倍ぐらい広がるようである。

地デジ普及率の数字にワンセグを混入したら、ドエライ数字が出てきてしまうことは想像に難くない。また昨年にはすでにワンセグケータイの累計出荷が1000万台を突破した。これを受像器の数字に組み込んだら、大変な数字が出てきてしまう。ここはしっかり見ておきたいところだ。

また補償金も、ワンセグへの動きはきちんと確認しておきたい。ワンセグケータイを始め、USBワンセグ機器などは、録画機能を持つものが大半だ。補償金の議論にワンセグが登って来たら、これもまた大変な数字になる。

これまで補償金は、「メディア課金」が中心だった。CD-RやMDなど、大量消費されるメディアの価格に上乗せされているわけである。iPodへの課金議論で注意しておきたいのは、これが通れば事実上「デバイス課金」への移行が本格化することである。

そうなれば、本体に録画可能なケータイや、さらにはメディアを内包しないUSBワンセグチューナー単体にもPCで録画できるとして、課金しないのは整合性がとれない、という議論になってしまう。

普及率と補償金、この2点にワンセグを絡めないよう、常に監視することを忘れないようにしたい。

ダビング10と心中するか補償金

6月2日開始という計画だったダビング10も、どうやらその日開始はない、ということのようだ。昨日また文化庁が私的録音録画小委員会で、iPod補償金の話を持ち出してきた。音楽だけでなく映像の方も、ダビング10対応のレコーダに補償金を課す考えだ。

朝日新聞の赤田氏は、ダビング10を人質に補償金を通すのではと予測しているが、事実このような動きがあるとしたら、それはタチが悪いと言わざるを得ない。権利者側への反感は、また増大するだろう。

それなら消費者側は、ダビング10はいらないから補償金もなし、という選択肢がある。ダビング10などもともと筋が悪い技術だし、そもそもがオリンピックに間に合わせるための暫定合意策にしか過ぎない。そのオリンピックもなんだか素直に楽しめない状況になりそうだし、まあ記録として残す人はムーブでいいんじゃないか。ずっとHDDに残しときたいもんでもないだろう。

それよりも根本的に、もうB-CASそのものが穴になってるじゃんとか、そもそも無料放送にDRMって意味わかんないですけど、っていうちゃぶ台返しをしてしまったほうが、話はずっとすっきりする。

国として一番困るのは、国民がいつまでもアナログ放送に依存して、デジタルに移行しないことだ。私的複製の範囲で自由に番組の保存や複製などができないのであれば、アナログ放送停波をきっかけにテレビ見るのやめる、せいぜいワンセグをだら見する程度の人手を挙げてー、とアンケートを採ったら、いい具合に楽しいことになるかもしれない。

そういえば、NHKの福地茂雄会長が「若者のテレビ離れに危機感」という記事も出ていた。 アサヒビールからNHK会長に抜擢されたということから、経営者としては優秀な人なのだろうが、テレビを見ない人に向かっての宣伝にテレビを使う、というプランの無意味さに、放送局の限界を見る思いだ。

ネットが原因でテレビ離れが進んでいるという分析が出ているのなら、普通はテレビをネットに持ち込むことを考えるだろう。ネットってのは日本固有の閉じたIPv6網のことじゃなくて、wwwのほうね。

だがそれができない日本独自の事情がある。最初ネットに食われることを懸念して、放送のネット乗り入れを自ら否定してしまったため、著作権法的にも放送法的にも、自ら身動きを取れなくしてしまったのである。

こう言っては気の毒だが、放送の素人である73歳のおじいさんから若者をコントロールするプランが出てくるとは、誰も期待していないだろう。むしろ膠着した放送の因習をぶっ壊すために、福地氏は外部から呼ばれたんじゃないのか? と思うのだが。

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JASRAC、公取委の立ち入り検査を受ける

すでにいくつかのニュースが取り上げているが、今日公取委がJASRACに立ち入り検査したようだ。

日経の記事によれば、放送局との包括徴収契約が独占禁止法違反の疑いがあるということのようである。だが局との包括契約は次第に縮小傾向にあり、最近は使用した楽曲を申請するように変わってきている。公取委はちょっと動くのが遅かったかもしれない。

もちろんこれを口実に、いろいろ調べていって別の件が出てくるかもしれない。確かに音楽著作権の支分権が正しく新規参入の管理業者に委託されていないという現状はあるので、そこまで含めて是正されてこそ、公平な権利ビジネスのスタートと言えるだろう。

公取委が良い仕事をすることに期待したい。

規制緩和の第一歩

これまでB-CASカードが障壁となって、PCサプライメーカーがデジタル放送のテレビチューナーユニットが発売できなかったわけだが、ようやくその障壁が緩和されることになる。その第一報が報道された。

これまでB-CASカードがこれらの単体チューナーに発行されなかったわけは、カード発行の対象として、「独立した受信機」以外に発行できるという規定がなかったからだ。これらチューナーカードは、画面出力をPCに依存するので、独立した受信機と見なされなかったのである。現在市販PCでカード発行を受けているものは、そういうPC全体を一つの受信機と見なしているわけである。

しかし発行基準が緩和されたからといって、デジタル放送特有の暗号化やDRM制限が緩和されるわけではない。そのあたりは従来どおりである。

その一方で、黒フリーオ発売といったニュースもある。こういう製品を受けて、総務省デジコン委員会では、もうB-CASカード意味ないじゃん的な展開になっており、せっかく規制緩和したところでアレなんだが、逆にB-CASカードの存在意義そのものをもう一度問う、良いチャンスということかもしれない。